パーキンソン病の主な病態は、脳の「黒質（こくしつ）」という部分にあるドーパミン産生神経細胞が徐々に減少することにあります。

この神経細胞が壊れることで、ドーパミンという神経伝達物質の分泌が不足し、脳全体の運動制御機能に異常が生じるのが、パーキンソン病の基本的な機序です。

黒質とドーパミンの関係

黒質は中脳にある小さな領域で、ドーパミンを生成して「線条体」などの基底核に信号を送る役割を持っています。基底核は、手足の動きや姿勢、筋肉の緊張などを自動的に調整する「運動の司令塔」のような役割を果たします。ドーパミンが不足するとこの調整がうまくいかなくなり、手足の震え、筋肉のこわばり、動作の遅れなどの運動症状が現れます。

レビー小体の出現

また、パーキンソン病の神経細胞内には「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質（αシヌクレイン）の凝集体が確認されます。これは細胞機能の異常や神経細胞死に関与していると考えられており、パーキンソン病の進行や多様な症状との関連も研究が進められています。

このように、パーキンソン病の機序は、ドーパミン神経の減少と、それに伴う運動調整の異常によって説明されます。現在ではこの仕組みをもとに、ドーパミンの働きを補う薬物療法や、神経回路にアプローチする治療法（例：脳深部刺激療法）も行われています。

パーキンソン病は進行性の神経疾患ですが、近年の医学の進歩により、さまざまな治療法によって症状をコントロールし、生活の質（QOL）を向上させることが可能となっています。パーキンソン病の治療法は、主に以下の3つに分類されます。

1. 薬物療法（ドーパミン補充・作用の調整）

最も一般的な治療法が薬物療法です。ドーパミンが不足することによって起こる運動障害を緩和するために、主に以下のような薬が使用されます。

• L-ドーパ製剤：脳内でドーパミンに変換される薬。効果が高く、初期から中期の症状に有効です。

• ドーパミン受容体作動薬：ドーパミンの代わりに神経に作用する薬。

• MAO-B阻害薬・COMT阻害薬：ドーパミンの分解を抑え、効果を持続させる薬。

症状や進行度、年齢などに応じて薬の種類や量が調整されます。

2. リハビリテーション・運動療法

薬と並行して重要なのがリハビリテーションです。特に以下の点で有効とされています。

• 歩行・バランスの改善

• 筋力・柔軟性の維持

• 日常生活動作（ADL）の向上

• うつ症状の予防

理学療法士による個別プログラムのほか、鍼灸やマッサージといった補完医療も、症状緩和やリラックス効果を目的に取り入れられることがあります。

3. 外科的治療（脳深部刺激療法：DBS）

薬物療法で効果が得られにくくなった場合、外科的治療（脳深部刺激療法：DBS）が検討されます。これは脳の特定部位に電気刺激を与えることで、震えやこわばりなどの症状を改善する治療法です。専門医の判断のもと、安全性と効果を見極めながら実施されます